ヒヨコ・イン・ザ・ワールド NEO

Fukunosukeとhiyokoのライフログ

杉本博司 絶滅写真

Fukunosukeです。

 

 

東京国立近代美術館。

 

杉本博司 絶滅写真

 

杉本博司氏については、昨年同氏が手掛けた江之浦測候所に行った他、写真展にも二度ほど足を運んでいます。今回の写真展はこれまで見た中で一番大きな企画展でした。

 

<ジオラマシリーズ>

知っている人も多いと思いますが、まずは写真を見てください。

 

おお、ゾウガメ、ガラパゴス!こんな所に撮影に行ったのですね!

 

これは地上30メートルの木の上で生活する猿。30メートルの木のてっぺんで撮影?猫写真の大御所岩合さんもビックリですね!

 

ハイエナが北京原人を背後から襲おうとする瞬間!ペ、ペキンゲンジン?まだ生きてましたっけ?

 

これらは、アメリカ自然史博物館等のジオラマをカメラで撮影したものです。実際の風景や生き物ではないです。それなのに、ちょっと本物のような、実際の風景を見ているかのような不思議な感じがします。写真は真実を写し撮るものですが、偽物(ジオラマ)を撮ったら本物みたいになったぞ、ということらしいです。おもしろいですね。

 

 

<劇場シリーズ>

廃された映画館等のスクリーンに映画を一本映写し、その間シャッターを開放して撮影した写真が劇場シリーズ。2時間の映画を1枚の写真に押し込めるという摩訶不思議な試みです。スクリーンは白飛びし、巨大な発光体のように見えます。

 

これはパリのオペラ座。廃墟映画館ではないので、ちょっと違う狙いかも知れませんが、今回フランスで見学に行った場所だったので印象に残りました(そちらはまたいずれ)。

 

<海景シリーズ>

世界各地の海、水平線、空だけを被写体とし、人工物をすべて排除した写真。太古の人達が見たのと同じ風景を写真にして見られるようにしましたよという狙いだそうです。

 

サビオレから見たリグリア海。リグリア海とは地中海の一地域の様です。実際の風景を写した写真なのに、何か記憶の中にあるイメージを見ているかの様。

 

江之浦測候所からみた相模湾。僕が撮った写真と同じ場所からかも知れません(笑)

真ん中上のあたりが少し明るくなっています。もしかするとこの上に月があるのかな。

 

 

<建築シリーズ>

僕がピンボケに撮影したのではありません。杉本博司氏がそのようにぼかして撮っています。

 

これはテロで崩落する2年前のワールドトレードセンター。これもピンぼけ。

これらは、建築家が建物の設計を行う時、頭の中にぼんやり浮かんでくる完成した建物のイメージを再現する様に撮影したのだそうです。つまり、建築家の仕事の一部を追体験してみようという試み。

 

 

<スタイアライズド・スカルプチャーシリーズ>

衣服とは人間の肉体を覆う「第2の人工皮膚」であり、それ自体が完璧なフォルムを持つ三次元の抽象彫刻(スカルプチャー)なのだ、という、僕にはちょっとよくわからない写真群。

 

ディオールのドレス。

 

 

<オンティエシリーズ>

これは三葉虫の化石だそうです。

氏の考え方によれば、「化石と写真は同じ機能を持っている。すなわち、どちらも時間を保存することができる」ということだそうです。なるほどですね。

 

 

 

 

<ポートレイトシリーズ>

ダイアナ妃ですね。

 

ナ、ナポレオン??まだ生きてましたか?

 

これらも実際の人物を撮影したものではなく、マダム・タッソーの蝋人形なのだそうです。びっくり。意図は最初のジオラマシリーズと同じなのかな。どうでしょう。

 

 

<放電図シリーズ>

暗室の中に大きな銀塩写真用の印画紙を敷き、その上で発電機(静電気発生装置)などを使って、高電圧を直接放電させることで撮る(作る?)のだそうです。

 

純粋にすごいです。本当にこれだけで芸術。

 

 

<オプティクス(Opticks)シリーズ>

太陽の光をプリズムで分解し、その色を写真に収めたもの。ただ信号機みたいに色を塗ったようにしか見えませんが、これが写真とはすごい。

 

 

最後に飾られていたのは、写真ではなく地獄草子の断簡と光学ガラスで作られた五輪塔。

 

地獄草子を思う 

応仁やはたまた関東大震災 び(美)いにじゅうく(二重苦)にも燃え果てて今

 

とても見応えがありました。何よりこれらの写真のほとんど(全部でしょうか?)が銀塩写真というのが驚きです。一見普通の写真に見えますが、どの写真もそのように撮るのがとても難しい写真だと思います。銀塩カメラは撮影後フィルムを現像するまでどのような写真が撮れたかわかりません。従い、焦点距離、絞り値、露光時間、使用するフィルムの感度、被写界深度をどうすればどう撮れるか、それが頭の中で自在に設計できなければこのようには撮れないと思います。デジタルカメラなら撮った写真をその場で確認して設定を追い込んでいけばいいですが、銀塩カメラではそうはいきません。杉本博司氏の写真技術がいかに卓越しているか、ということは僕でもわかりました。

 

あ、そうか、「絶滅写真」とはそういうことなのですか。

 

たぶん、「デジタルカメラならこんなことは容易くできてしまうから、杉本博司の写真(写真技術)は絶滅しますよ」ということなのですね。もちろん、各シリーズの発想や着想、何を撮るのかという思索は氏の思考力によるものですから、その偉業がかすむことはありませんが、カメラという機械を使ってそれを表現する技術という点では、確かに絶滅というのもわかる。北京原人や三葉虫、ナポレオンにしたって不滅のものはない。杉本博司とてそうなのだということが語られているのだなあと思いました。

 

まさに諸行無常。

 

話はそれますけど、AIの進化によってほとんどの知的職業は不要になる日が数年以内にやって来るといわれています。たぶん本当のことだと思います。つまりはそういった職業も絶滅の危機に瀕していますよね。その日が来たら「絶滅職業展」でもやるのかな。

 

 

おまけでこの日のお昼は土手のいせや。

吉原大門の近く、土手通りに店を構えるこちら、建物は昭和初期、100年ものだそうです。戦争で焼けなかったのですね。

 

 

すごくなーい?

 

いやあ、店内も100年そのまま。

 

豪徳寺の招福猫児もいます。

 

いどっこ(江戸っ子)気分だねえ!

 

天丼はイロハ3種あってこれはロ(訪問時2900円)。穴子と海老が十字架状に乗っかってきます。

 

こちらお椀は別注文システム。なめこ椀(300円)

 

築100年のお店でいただく天丼は何とも言えず美味しかったです。