※その3はこちら
トメ吉:「えー! オペラァ? すごい! それホント?」
バリ介:「うん。僕らも、せっかくだから連れて行って貰おうかと」
マチコ:「じゃあ話は決まりね。今夜、スカラ座の前で待ち合わせ
しましょう」
お嬢:「スカラ座って新宿の映画館でしょ?」
バリ介:「お嬢にしては、珍しくボケかますね」
お嬢:「な、何よ! 仕方ないじゃない! 知らないんだから!」

マチコ:「まあまあ、とりあえずエスプレッソでも飲んで、“本場”と
いうのをよく味わってね」
お嬢:「あらー、おいしいワー。さすがねー」

トメ吉:「お、おおぉ! おいしい!」
お嬢:「ちょっとぉ!」

マチコ:「どう? 一流のエスプレッソ職人の技は」
トメ吉:「んー。んまい! 本当に一流だ。バリコピ(バリコーヒー)も
かすんじゃうね」

マチコ:「イタリアにはあちこちにバールがあるけれど、同じ機械、同じ
豆を使っても、やはり味わいが違うのよ。だからエスプレッソ
職人は一流でなければ生き残れないわ」
トメ吉:「そうなんだー。きっと一流のエスプレッソ職人は、とっても
格好いいんだろうねー」
職人:「ん? 俺のことかい?」
トメ吉:「ひゃーホントだ。いい面構えだねーおじさん!」

(余談)この後、そうとう怪訝そうな顔をされました。
やがて日は暮れて、、、
暮れてないけど、、、ミラノ、スカラ座(夜8時です)。

トメ吉:「お、おおおおぉ! 本当に来ちゃった! スゲー!」

マチコ:「どう、素晴しいでしょ。本物のオペラがここにあるのよ」
トメ吉:「おおおぉ、こ、興奮して鼻血が出そうです!」

バリ介:「ラッキーだねー! みんなに恨まれちゃうかもね」
お嬢:「ステキー! 上流階級って感じじゃない!?」

マチコ:「この舞台に立てるのは、ほんの一握りのトップスターだけ。
ひたすら努力を重ねて、チャンスをもぎ取った一流の歌い手
だけが、スポットライトを浴びるの」
トメ吉:「うわぁー、格好いいなぁー!」

マチコ:「けれど、わかるでしょ。どの歌い手も、ここに辿り着くまでに
どれだけ辛い思いや、苦労を重ねているか知れない。でも
舞台の上では、そんなもの微塵も見せない。それが一流の
プライドだから、、、」
トメ吉:「、、、一流、、、、プライド、、、?」

・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・・・。
マチコ:「どうだった? 初めてのオペラは」
トメ吉:「うん。ボク、イタリア語はわかんないけど、感動して涙が
出ちゃった」
マチコ:「本当に素晴しいものは、そうやって人の心を動かすのね」

マチコ:「ねぇトメ吉さん、、、。エスプレッソ職人と、オペラ歌手と、
どちらが一流で、どちらが素晴しいと思う?」
トメ吉:「いや、どっちって、どっちも素晴しいじゃないですか」

マチコ:「あたしもそう思うわよ、、、。
あたしはね、どっちがどうってことじゃなくて、その道を極めて、
プライドを持って仕事をしている男の人が好きだわ」
トメ吉:「マチコさん、、、」

マチコ:「トメ吉さんは、どんな風になっていくのかしらね、、、」
マチコの言葉は、電流の様にトメ吉の体を駆け抜けた。
その5につづく。
(もう、いいんじゃないか?)
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